TAKADA Gallery
2018年回顧展への寄稿 世良啓氏
外は台風通過中。かなり激しい。
先月七戸で開かれた「高田雨草水墨画回顧展」を思い出す。
七戸の森の中に民芸館風の建物。室内に新谷祥子さんのマリンバが雨音のように響いていた。
二階は雨草の服飾デザイナー時代から水墨画家時代までの本格的な仕事を一挙に展示し、一階はプライベート、遊び心満載の絵手紙やイラストを集めて、その生涯が見渡せるような豊かな展示。
棟方志功は現代アートの先駆者ポロックより早く、世界で初めて墨の飛沫をそのまま活かした画法を編み出し、絵や書をかいたといわれる。
高田雨草の水墨画も、そんな躍動する線が印象的だ。草木や山河、雪月花に野生の命を宿らせて、静かに激しく自由自在、時にはユーモラスに筆が動いてゆく。
空白の使い方やモチーフの繰り返しにデザイナーとしてのセンスが見える。画面の沈黙が"北の世界"の息づかいを際立たせている。
まるで新谷さんの奏でる音を絵にしたような、いや、雨草の墨筆のリズムをマリンバが音で立体化させたような、つまりあのマリンバの音に潜む地霊の源泉を知ったような、リズミカルな墨の音色。作田川、奥入瀬の流れ、霧や雪の匂い、縄文から続く七戸の森や遺跡、まつりの笛の音や神楽…そうしたものに繋がって見える、聴こえる。
デザイナー時代の高田ヨネ(雨草)の仕事もすごい。デザイン画をいわさきちひろが手がけていて、すごくかわいい。
絵手紙には姪の祥子さんへの愛情が溢れていて、微笑ましい。
こんなすてきな人が七戸にいたんだ…
またぜひ開催してほしい。
(世良啓氏 青森県津軽在住。太宰治や寺山修司研究、文筆活動。画廊館主の新谷祥子は寺山修司音楽祭で世良氏と出会う。上記文章はご本人のフェイスブック掲載より許可得て紹介)
過去に行われた「髙田雨草の正月飾り展」より抜粋した写真をyoutubeでご覧ください。高田の試みた暮らしアート、装飾の愉しみ、飾りの遊びが満載です。
昨年の髙田雨草回顧展は県内外より多くの反響をいただきました。七戸町出身の髙田が私設画廊として建てた空間に髙田は町の子どもたちも訪れてくれることを望んでいました。今夏は近年見つかった作品や資料、装飾材料など創作の意図を知る展示と、そして髙田が晩年厚い信頼をおいた江澤美雨氏(昨年の回顧展で墨絵ガイドをしてくださった)のモダンな作品なども展示します。師弟の作品が並ぶ画廊。気軽にぶらり画廊散歩、皆様のお越しをお待ちしております。
青森県七戸町出身の水墨画家(1931ー2012)
本名髙田ヨネは、服飾の専門家として文化服装学院で教授のかたわら、水墨画家内山雨海に師事し水墨画家として雨草の雅号を受ける。晩年まで東京在住ではあったが、故郷に私設画廊を設立し、自身の作品のみならず地域との交流を深める展示などを広げるべく東京と青森の往来を頻繁に行い活動。故郷の教育委員任務時には子どもたちと文化の触れ合いについて尽力する。 東京銀座鳩居堂での個展、グループ展、NHK学園講師、水墨画教室主宰など、また自身の国内受賞作品などは当館に展示中。 2018年夏に髙田の七回忌として当館にて回顧展が開催され、4日間で200名以上の来館者を迎える。